( ゚天゚)( ゚天゚)

さる 九月末に行われたミニ五レス企画。
多くの作品が投稿され、熱い議論が交わされ、有意義な時間が過ごされたものと思う。

今回、そこで投稿された作品に向かって私が書きなぐった感想文の全文を公開する。
以前審査員の批評として紹介されたのは編集版であり、実際はあの三倍ぐらいあったのだ。
何故これまで公開していなかったのかというと、単に公開するのを忘れていたのである。

無論これは参加者批評、投票が行われる前のものであるため、幾つか齟齬があるかもしれない。
その辺りは是非ともご容赦願いたい。また、意見などあれば是非お願いする。
 
・デレを忘れない

終盤にかけての畳みかけは綺麗に仕上がっていると思います。
短い尺で読者の心を揺さぶる、それだけの力強さがあり、それが書けるだけの力量があります。
一方で、導入部分の世界観への案内がやや優しくないものと思われます。
私は最近モンスターハンターをやっているので、完全にそのイメージで読みましたが、
異世界、なおかつ独自の設定を読者に飲み込ませるには5レス制限は少し厳しかったようです。

・旅描く藝術家

タイトルがいいですね。旅描くという表現、語呂の良さはなかなか出てくるものではありません。
そして今回のテーマである『芸術』を巧く表していると思いますし、面白そうな雰囲気もあります。
ただ惜しむらくはこの時点でこの作品はまだ導入部分であり、完成はしていないということです。
キャラクターを用意する、という段階からそのキャラクターをどう動かすか、がキーになると思います。

・藝術は国を越えて

読めない。前作の続きであることは分かるのですがいかんせん読めない。
なんとなく雰囲気で掴むに何やら面白そうなことをしているのですが、それにしても読めない。
ググッた結果イタリア語らしいのですが、このググるという行為な厄介なもので、
日本語がそうであるように外国にも多種多様な慣用句、その土地独自の意味合いを持つ言語があり、
それらが全てエキサイト翻訳で分かるものではないということです。
故に前作同様面白そう、という感想だけを置いて私は他の人に任せます。

・目薬は空になって

読み解けない。恐らくコレかな、とかアレかな、というような解釈方法は浮かぶのですが、どれも定かではないです。
だいたい私はこの手のミステリアスな文章に対する読解力を著しく失しているんですね。許してください。
さておき、このミセリちゃんのキャラクターというのは少し変ですが、それゆえか妙にリアルだと思います。
一言ごとに人格が入れ替わっているかのような軽蔑と陽気の繰り返しは、いかにも年頃の女の子ではないかと。
雰囲気のよさは素晴らしいです。ただ、個人的には読み解く道具がもう一つ二つ欲しいところ。
無論読み解かなくてかまわない小説も存在しますが、これはそうではない気がするので……。

・造られた

ま、実際は一文字ずつ打たずに『ブーン』で変換するんですけどね。
ブーン系という名前であるがゆえ、ブーンには様々な人生が与えられますが、これもその一つだということですね。
ある意味で非常にベーシックなメタフィクションであるように思います。
ただ、物語としてどうかと言われると、最後に作者登場で補完してしまっているので上出来ではないかと。
他人に、メタフィクションって何? 的なことを訊かれた際に、こんな感じで回答すればいいかなと思います。
もちろんメタフィクションにも色々ありますし、そもそも誰にも訊かれないでしょうけども。

・おやすみT-2

抜群ですね。特に言うことが見当たらない。
5レスを綺麗に配分している作品だと思います。
自己紹介と目的の設定に始まり、世界観の説明やエピソードの加え方が、ちょっと熟練のものを感じます。
敢えて何か文句をつけるなら、最後のレスで、いわゆるアンドロイドに関する哲学が述べられますが、
このあたりは書き出しに比べ些かハードなのでもしかしたら少し読者を遠ざけてしまうかもしれない。
ま、どうでもいい程度の問題です。素晴らしい作品でした。

・ある個展

物語、文章はよく出来ていると思うのですが、構成の部分でやや作品が殺されてしまっているような気がします。
この作品のキモは『絵』だと思います。
つまりクーという女性が必死に描き、ドクオという男性が死んでなお執着したこの『絵』が核ではないかと。
それゆえ、その絵の全貌を最初のレスで明かしてしまうのはちょっと勿体無い。
あくまでも個人的見解ですが私なら最後の方に持ってくるでしょう。その方が、写真との対比もしやすいからです。
話自体は面白く仕上がっています。ただ、ちょっと組み替えればもっと面白くなるはずです。

・ボーンチャイナ

一レス目から不安感を煽る文章に惹かれます。終止敬語調なのもプラスに働いているようです。
ただ話全体としてはちょっとテンプレをなぞりすぎ……どこかで聞いたような話にまとまっているように思えます。
特にギコのキャラクターなんですけれども、いかにも死亡フラグ立てに来ましたという振る舞いなので、惜しい。
逆に言えばテンプレは書けるということですので、次はその一歩先を書いてみてはいかがでしょうか。

・老ウィリアムの追憶

抜群ですね。これも特に言うべきことはないです。
ドキュメンタリー形式で進む話は撃墜王の人間性を詳らかにしつつ、物語を紡いでいきます。
そして戦時にありがちとも思えるエピソードが終わり、記者の回想が入っての、最後の一文。
それほど目新しくはないでしょうが、この流れを上手に組んで読ませるのは簡単にできるものではありません。
それでも安易か一言物申すなら、一人称が『私』でなく『俺』になっているところがあることぐらいでしょうか。
些細な問題ですね。良いものを読ませてもらいました。

・乱立し、立ちふさがるかつての遺産

仮に僕がこれだけ他人の作品を挙げられて批評されたら完全に激おこで怒鳴りこみますね、間違いない。
この手の作品は誰もが突き当たる問題であり、だからこそ評価がしづらいものと思います。
私自身もこの辺りについてはまだ悩んでいるところなので、なかなか結論の出難いところです。
ただ、この作品に関しては別に『藝術審議所』というような独自設定を出さなくてもよかったのではないかと。
これは『藝術』とは何か、というより自己探求とか、そっちの問題であるように思いますので。

・点数、名声、私の絵

抜群ですね。何より『こんなトソンは嫌だ』と思わせる能力が非常に高い。
私は絵はサッパリなので分からないのですが、周りの話を聞くとこんな風潮なのかなと。
そういう現実感であるとか、妙な打ちのめされ方などが、如実に表現された物悲しい作品です。
然しながら、ちょっとジョルジュのキャラは出来すぎかなと。
どうしても、お前が描けと思ってしまいますし、主人公挫折マシーンとしての役割しか果たしていないと見えます。
不愉快さという点で非常に魅力的な主人公なので、ぜひとも続きを読んでみたいものです。

・紡がれる旋律

伝えたいことは伝わっているように思います。
相応しい舞台と相応しいキャラクター、そして相応しい展開がきちんと用意されているためでしょう。
ただし尺の短さもあってか、どうも主人公の心情変化が唐突すぎるように思えます。
中心にある曲と同様に、スローテンポで書くことを意識すべきだったかもしれません。
また、文章に繰り返しの表現が多く、少し読みづらいのも惜しいところです。

・果ての庭園に咲く

私は花に対してほとんど感慨を抱かないのですが、この作品は面白く読むことができました。
展開としては分かりやすいホラー小説のそれであると思うのですが、地の文が随分冴えています。
また、途中に挿入される祖父母のエピソードが魅力的で、発想も新鮮なものと感じられました。
落としどころにもう一つ工夫が欲しかったですが、それでなくとも十分巧い仕上がりです。
敢えて言えば、特に前半部分のツンの台詞にやや説明調、違和感を覚えました。

・完成しない

これもちょっと読み解けない部分が多いです。
ただその前に、ミセリやでぃとモララーの関係がちょっと小ざっぱりし過ぎていると思います。
不協和音を奏でるには少し執着や憎悪などの感情的な部分が足りていないのではないかと。
なかなか書きづらい部分ではあると思うのですが、それが加わればより重みと現実味が増します。
タイトルやオチから考えて真相はこうだろう、というのはありますが、ちょっと書ききれていないように思います。